こんにちは、ねこきん(@nekokin37)です!
鑑定士の仕事として、地価公示や地価調査が良く取り上げられますが、他にも公的な評価として相続税路線価の標準画地の評価というものがあります。
今回は相続税路線価の標準画地の評価について記事にしてみました。
相続税路線価の標準画地の評価も地価公示や地価調査と同じように毎期安定的な売上を確保できる仕事の一つとなっています。
不動産鑑定士が相続税路線価の元となる“相続税標準画地の価格”というものを毎年査定しています。
この仕事を実務では“国税”とか“相路(ソウロ)”と呼んだりします。
相続税路線価の基礎となる重要なお仕事。
責任は大きいですが、毎年の売上は100万円~と報酬も良さげです。
1. 相続税路線価とは
相続税標準地の前に”相続税路線価”をとてもざっくり簡単に説明します。
路線価は『この道路に面している土地はこれくらい』目安を示しているものです。
㎡単価で表記されてます。
相続の場合に遺産の中に不動産があれば、不動産の評価額は相続税路線価を使って、土地の評価額を求めます。
(建物は固定資産税評価額を用います)
『路線価×土地数量=土地の相続税評価額』こんな感じです。
(実際は、ここから画地調整などの細かい補修正を行います)
試しに札幌すすきの路線価を見てみましょう。
こんな感じ。
相続税路線価は地価公示価格の80%程度
価格水準の目安は以下の通りです。
不動産業界の中では割と有名な比率なので覚えておいた方が良いです。
これを利用すれば『この道路に面している土地はナンボ位』と簡易的に査定したりできます。
上の例で行けば、
300㎡ × 1,330,000円/㎡ ÷ 80% ≒ 500,000,000円
こんな感じで相続税路線価から地価公示水準の価格が求められます。
相続税路線価のその他の使い方
相続税路線価は土地価格の簡易査定に使う以外に色々な指標として使えます。
例えば次の3つ。
- 『あっちの土地よりこっちは路線価が高いから地域の格は上かな』といった具合の地域格差の検討資料にも使えます。
- 『ここで路線価が大きく変わるから地域の性格が変わってるかも』といった地域の特性の判断の検討資料にもなります。
- 『路線価に比べて1.5~2.0倍地土の取引が中心なのに、この事例は4倍?当事者間で買い進みのような特殊な事情あるかも』といった取引事例の妥当性の検証もできます。
こんな感じで路線価は評価シーンで色々役立ちます。
※実際の取引価格や地域の格が路線価と乖離していることがままあります。特に都心部の商業地は路線価の1.25倍どころではなく3~5倍で取引されていることがあります。
路線価だけで実勢価格や地域格差が全て求まるなら鑑定士いらないですよね。
細かく分析しないとわからないことが多くあるので、そこは鑑定士の腕の見せ所です。
相続税評価と鑑定士のビジネスチャンス
相続税路線価で求まる相続税評価額と実際の取引市場の価格(時価)にギャップがあるとき、鑑定士のビジネスチャンスになります。
相続税評価額は”課税の公平性”を前提として、誰がやっても同じ結果になるような仕組みとなっています。
誰がやっても同じ結果になるようにするためのツールが相続税路線価です。
機械的に計算するがゆえに、実際の価値と乖離する場合があります。
ここが鑑定士のビジネスチャンスです。
具体的には”個性が強い”不動産は相続税評価額より時価が低くなる可能性があります。
- 地形が著しく悪い不整形地
- 規模が著しく大きい面大地
- 建築基準法上の接道要件を満たしていない画地,無道路地
などなど、こういった”クセのある”土地は相続税法上の評価(財産評価基本通達)のやり方によると過大な評価額になることがあります。
※もともとが公示価格の8掛けなので、個性が強くない場合は実勢価格より高くはなりにくいものとなっています。
こんな時に、不動産の価値を鑑定評価に基づいた適正な時価をもって申告すれば、納める相続税を安くできますよ!といった感じで税理士や金融機関とタッグを組み、お客さんにアタックしてお仕事を取っている鑑定士も多くいます。
時価と相続税評価額にギャップが発生する具体例についてもっと知りたいという方は、東京アプレイザルの芳賀先生の本がわかりやすいです。
相続についての基礎知識を増やしたい方はこちらの書籍がおススメです。
3. 相続税路線価の調べ方
路線価を調べる便利なサイトを2つご紹介します。
■全国地価マップ
相続税路線価と固定資産税路線価を地図上で調べられます。
固定資産税に関しては標準宅地も調べられます。
読み込みが若干遅いのがストレスですけどシームレスで見れるので使いやすいです。
路線価があれば地価公示が近くになくても凡その公的価格の水準は調べられますね!
■財産評価基準書
もう一つは国税庁のページです。
倍率地域についての情報など相続税路線価について詳細な情報が調べられます。
相続税路線価だけで地図スクロールでも見れないですが、地価公示・地価調査ポイントが地図に落ちてるので位置関係が把握しやすいです
さきの全国地価マップは最新情報の更新にタイムラグがあるため、相続税路線価が発表後の2~3ヶ月は財産評価基準によらないと直近分はわかりません。
(相続税路線価は毎年7月に発表されます)
4. 相続税路線価の決まり方
相続税路線価は”相続税標準地”を基準に国税庁が線を引いていきます。
この”相続税標準地”を不動産鑑定士が査定します。
これと同時に、”精通者意見価格”というものも鑑定士が求めます。
たくさんのポイントが設定されていて、前年からの変動率を査定(精通者として意見する)して本年の意見価格を求めます。
わかりにくいですね。
もう一度整理します。
- まず、相続税標準地(親のポイント)を査定する。
- 次に、相続税標準地(親のポイント)を参考に、精通者意見(子のポイント)を査定する。
- そして、標準地・精通者意見を参考に路線価を引っ張っていく。
路線価の目安となる親と子のポイントを不動産鑑定士が求めることになります。
ちなみに、標準地も精通者意見も、地価公示・地価調査を参考にしますので公示・調査が相続税路線価の目安の大元とも言えます。
5. 国税の報酬
相続税標準地の査定業務
標準地の査定業務の報酬は、地価公示・地価調査より少し高い水準で、1ポイント72,000円くらい。
割当ポイント数も都市部と地方とで異なります。ちなみに私のところは一人当たりの平均割当地点数は12~13ポイントでした。
相続税標準地の査定業務で毎年85万円位は売上が見込めそうですね。
精通者意見
精通者意見は1ポイント1,400円くらいです。
単価は安いですが、ポイント数はべらぼうにあって私のところで200地点位でした。エリアでかなり差異があります。
ざっくり報酬は30万円くらいですね。真冬にレンタサイクルで実査したときは凍え狂いましたが報酬としては◎です。
ちなみに意見価格を査定するだけで、鑑定評価書の作成もありません。
鑑定評価書は標準地だけです。
報酬の合計
私のところは国税業務トータルで毎年110万円位の売上となりますね。
地方では鑑定士の数が少なく、割当ポイント数が多くなる傾向があるため、もっともっと報酬あがると思います。
国税業務は、地価公示・地価調査のように分科会(定例会議)はないです。
他の鑑定士さんとの打ち合わせの回数が地価公示・地価調査に比べて少なく、取引事例の作成業務もないため時給換算は良いです。
6. 国税業務のスケジュール
10月下旬頃から業務が始まって1月下旬~2月上旬に提出です。
業務時期が地価公示と被ってきます。
地価公示の提出が終わったら、すぐに国税にかかるって感じです。
国税も地価公示と同様に専用のソフトを使って簡易な評価書を作成します。
7. この記事のおさらい
- 相続税路線価は地価公示の8掛け水準。
- 相続税路線価で求まる相続税評価額と時価の乖離はビジネスチャンス!
- 国税の売上は110万円位。
- 国税の作業時期は公示とかぶって少し大変!
鑑定士の仕事について、公的評価も含めて網羅的に記載されている本を紹介しておきます。