こんにちは、ねこきん(@nekokin37)です!
鑑定評価基準で出てくる賃料ってたくさんあってわかりにくいですよね。
今回は混乱しがちな賃料についてご説明します!
鑑定評価基準での賃料は抽象的な説明なため、理解しづらい部分もあるかと思います。
また、賃料は鑑定評価基準の総論5章と総論7章と各論2章のいずれも章の終わりだったり、勉強の後半で出てきたりするため、息切れしているタイミングだから気が抜けがちです。
この記事では図解も使ってわかりやすく整理してみました。
賃料の概念で立ち止まることなく、勉強がスムーズに進められるようになると思います!
賃料の全体像を分類
鑑定評価基準で”賃料”を冠する名前のものがたくさんでてきます。
正常賃料、限定賃料、実質賃料、支払賃料などなど。
名前だけではイメージも湧きにくいものもあって混乱してしまいます。
まずは、どんな賃料があるのか全体像を整理します。
ざっくりこんな感じです。
それではひとつずつ内容を見ていきましょう!
1. “賃料の種類”からの分類
まずは”賃料の種類”からの分類から。
総論5章で出てくる賃料の種類です。
価格の種類と同じ考え方で理解すればいいのでさほど難しくないと思います。
価格と違って気を付けるポイントは、『新規賃料』と『継続賃料』とベースが2つある点です。
新規賃料:①正常賃料
①正常賃料:マーケットで成立する合理的な賃料。
要は、正常賃料は誰に対しても公平な賃料のことですね。
新規賃料:②限定賃料
②限定賃料:特定の人とだけで成立する賃料。
③継続賃料
③継続賃料:特定の人とだけで成立する賃料。
継続賃料は新規賃料と違って、すでに既存の賃貸借契約が存在していることがポイントとなります。
ここまでで3つの賃料が出てきましたね。
新規賃料に2つ。
継続賃料が1つ。
2. ”賃料の構成要素”からの分類
次は、”賃料の構成要素”からの分類です。
4番目の賃料は④実質賃料です。
総論7章で出てきますが、ここで『実質賃料』という分かったような分からないような名前の賃料が出てくるため、正常賃料との違いってなんだっけ?っと混乱しがちです。
正常賃料は賃料の種類です。
誰に対して合理的な賃料なのか、という基本的事項の確定の一つです。
実質賃料は”賃料の構成要素”から賃料を説明している概念です。
では、実質賃料を見ていきましょう。
④実質賃料
基準はまどろっこしい表現でわかりにくいですが、気合でなんとか暗記してください。
私は文を理解する時は、以下のように情報を適宜区切って整理するようにします。
文章理解の参考にしてみてください。
実質賃料とは、
賃料の種類の如何を問わず賃貸人に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正なすべての経済的対価をいい、
純賃料
及び
不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる諸経費等
から成り立つものである。
ここで実質賃料の理解のため基本式を見ます。
実質賃料の基本式は2つの側面から考えることができます。
一つ目は借主目線です。
借りる人はどれだけ支払うことになるか、という考え方です。
実質賃料=➊支払賃料+❷一時金の運用益および償却額+❸付加使用料のうち実質的に賃料を構成する部分
構成要素が3つあるところがポイントです。
二つ目は貸主目線です。
オーナーや地主さんはどれだけ儲かるか、の視点です。
実質賃料=➊純賃料+❷必要諸経費等
構成要素は2つです。
➊純賃料が儲け、❷儲けを獲得するために掛かる経費の合計が賃料という考え方です。
鑑定評価で求めるのはこの実質賃料です。
より正確には『正常実質賃料』です。
マーケットで成立する合理的な賃料。それが正常実質賃料になります。
⑤支払賃料
総論7章では実質賃料のほかに、5番目の賃料として⑤支払賃料が出てきます。
支払賃料は実質賃料の構成要素です。
もう一度、実質賃料の基本式を見てみると、
実質賃料=➊支払賃料+❷一時金の運用益および償却額+❸付加使用料のうち実質的に賃貸人に帰属する部分
支払賃料は名前の通りで、私たちが日常で意識している賃料のコトです。
マンションを借りる時、まずは賃料を気にすると思いますが、どんなに賃料が安くても敷金・礼金がめちゃめちゃ高かったり、管理費・共益費がめちゃめちゃ高かったりすると、トータルで見れば実は安くない、なんとことになります、
支払賃料という名目だけにとらわれず、トータルで賃料を把握しないといけないというのが実質賃料です。
ちなみに支払賃料を鑑定評価で求める場合、実質賃料が求まって、❷一時金(の運用益および償却額)と❸付加使用料のうち実質的に賃料を構成する部分が把握できて初めて求めることができます。
実質賃料求めてから❷と❸を控除するっていう周り道して求めることになります。
”実際”の概念
最後に”実際”についてです。
総論7章で賃料の評価手法の一つ、賃貸事例比較法の定義で唐突に”実際”実質賃料とかいうのが出てきます。
この実際とは、名前の通り『実際に支払われている』という意味です。
”実際”と対立する概念は”正常”です。
”実際”は『実際に支払われている賃料』、つまり『現実に賃貸借契約があって、今支払っている賃料』ということになります。
”正常”は、鑑定評価の賃料の種類の概念です。
コトバを選ばずに言うと、正常賃料は『机上の空論の賃料』ということです。
実際実質賃料と正常実質賃料の違い、実際支払賃料と正常実質賃料の違いも整理できたでしょうか。
この記事のおさらい
鑑定評価上の賃料の概念を説明してみました。
全部で出てきた賃料は5つでしたね。
正常とか実質とか抽象的な用語が出てくると理解しづらい部分もあるかと思います。
まずは、全体像を抑えると道に迷わなくなると思います。
“賃料の種類”と”賃料の構成要素”という全く異なる概念の2つのグルーピングがあることを認識する必要があります。
実質賃料は基準の定義だけではなんのこっちゃなので、構成要素の基本式から見ると理解が早いです。
なお、実質賃料と支払賃料は賃料の構成要素での分類ですから、2つとも新規賃料として求めることあれば、継続賃料として求めることもあります。