こんにちは、ねこきん(@nekokin37)です!
地価公示・地価調査・相続税路線価に続いて、固定資産税路線価と鑑定評価の関わりについて紹介します!
不動産鑑定士が固定資産税路線価の元となる“固定資産税標準宅地の価格”(実務では”標宅(ヒョウタク)”と呼んでます)というものを毎年査定しています。
この評価業務のことは”固定(コテイ)”とか”固評(コヒョウ)”と呼んだりしています。
国税と並んで税評価の元となる重要なお仕事です。
毎年支払う固定資産税は固定資産税路線価で決まります。
固定業務には➊3年に一回の「評価替え」と❷評価替え以外の年の「時点修正」があります。
不動産鑑定業者の売上は「評価替え」の年に大きく伸びます。
ボーナスが増えたりもするので、固定の年は大変ですけど賞与月が楽しみだったりします^ ^
1. 固定税路線価
固定資産税の標準宅地の前に”固定資産税路線価”をとてもざっくり簡単に説明します。
路線価は『この道路に面している土地はこれくらい』目安を示しているものです。
㎡単価で表記されてます。
税金の元となる評価額はこの路線価を使って、土地の固定資産税評価額を求めます。
『路線価×土地数量=固定資産税評価額』こんな感じで求まります。
試しに道頓堀の路線価を見てみましょう。
こんな感じ。
固定資産税路線価は地価公示価格の70%程度
価格水準の目安は以下の通りです。
不動産業界の中では割と有名な比率なので覚えておいた方が良いです。
相続税路線価がない地域でも固定資産税路線価が引いてあったり、あるいは周辺に標準宅地が設定されていたりします。
市街化調整区域とかになると相続税路線価が引いてないことがよくあるので、そういったときは固定資産税路線価が価格の目線として重宝します。
2. 固定資産税路線価の調べ方
固定資産税路線価を調べることができる便利なサイトを1つ紹介します。
■全国地価マップ
相続税路線価と固定資産税路線価を地図上で調べられます。
上で示した図の通り固定資産税に関しては標準宅地も調べられます。
読み込みが若干遅いのがストレスですけどシームレスで見れるので使いやすいです。
3. 固定資産税路線価の決まり方
固定資産税路線価は”固定資産税の標準宅地”を基準に市区町村が線を引いていきます。
この”標準宅地”を不動産鑑定士が査定します。
標準宅地は3年に一回評価替えし、評価替えの間の期間は時点修正で査定します。
求める時点は、
- 標準宅地が1月1日
- 時点修正が7月1日
です。
こんな感じで業務が繰り返されます↓
つまり、固定では3年間に4回査定業務が発生します。
4. 固定の報酬
標準宅地の評価替えの報酬は1ポイント55,000円くらい
標準宅地の査定業務の報酬は、地価公示・地価調査と同水準かちょっと安い位です。
1ポイント55,000円くらい。
割当ポイント数も都市部と地方とで異なります。ちなみに私のところは一人当たりの割当地点数は70ポイントでした。
標準宅地の評価替えの時期は400万円弱位は売上が見込めそうですね。
ポイント数が多い地方では500万円を超えてきます。
不動産鑑定士の年収が統計的に3年に一回跳ね上がるのは、固定業務の評価替えによることが大きな要因です。
時点修正の報酬は1ポイント8,000円くらい
時点修正は1ポイント8,000円くらいです。
ポイント数は標準宅地と同様になります。
私のところで言うと、報酬は50~60万円くらいになりますね。
ちなみに時点修正率を査定するだけで、鑑定評価書の作成もありません。
鑑定評価書は標準地だけ。
報酬の平均値
評価替え、時点修正、時点修正、時点修正、評価替え…の順番で巡ります。
上の例でいくと、
400万、50万、50万、50万で、3年で650万円くらいの売上になります。
平均をとると年間215万円位ですね。
5. 公的評価業務への懸念
固定業務に限らずですが、公的評価関係の仕事は縮小傾向にあります。
どの業務もポイント数は年々減っています。民主党政権時代には事業仕分けの対象にも上がっていました。
個人的にも、将来的にはAIに取って代られる可能性がある仕事かなと思っています。
『そのエリアの標準的な土地の価格』なんてビッグデータで統計処理した方がより精度が高い価格出そうです。
また、固定は地価公示みたいに公表されないこともあってか、手抜きレベルの酷い評価書もあったりします。
雑な仕事して報酬がっぽり貰おうとか都合が良すぎですね。
自分たちで自分の首を絞めてる感じ…
不動産鑑定の土地評価は、”個性率を求める”仕事だと思っています。
大量のデータが集まらず統計分析で対応できないような部分に、不動産鑑定士が論理を組み立てて価格を説明していくものかなと。
データはないので、鑑定士が出した価格に対しても科学的に立証はできません。
答えはないものに対して、専門職業家としての意見や判断を述べていくトコロに鑑定士のやりがいや面白みがあって、まさにそういったトコロが今後鑑定評価の仕事が残っていく意義になると思います。
6. 固定業務のスケジュール
10月下旬頃から業務が始まって3月上旬に提出です。
ただし、スケジュール感は自治体によってマチマチで一概に言えません。
固定業務も地価公示と同様に専用のソフトを使って簡易な評価書を作成します。
時点修正のスケジュールはもっとバラバラです。凡そ6~7月頃に始まって8~9月頃に納品のイメージです。
時点修正なので鑑定評価書は作成しません。
7. この記事のおさらい
- 固定資産税路線価は地価公示の7掛け水準
- 評価替えは3年に1回。その間に時点修正は3回
- 評価替えの年で売上は400万円位。地方はもっと高い
- 時点修正は売上50万円位。時点修正も地方はもっと高い
- 公的評価は将来的になくなる可能性がある業務
不動産鑑定士の仕事について、公的評価も含めて網羅的に記載されている本を紹介しておきます。